「ねえねえレイちゃん」
「なに、キラ?」
「ギル、帰って来るの遅いねぇ」

時刻は午前零時すぎ。

ベッドの上で同じブランケットにくるまるレイにキラは呟く。
キラとレイの住むこの館の主人であるギルバートが遅くまで帰宅しないのはいつものことだったけれど、
それでもキラは寂しいらしく、レイの身体にすり寄った。

「キラ、ギルに会いたいよぉ」
「ギルは忙しいからね。我慢して」

そう言ってレイが自分より一回り小さなキラの身体を抱き締めて額に唇を落とすと、
キラは上目遣いでレイを見つめた。

「キラね、今日いっかいもギルに会ってないんだよ?」
「僕も朝しか会ってないよ?」
「でも、あえたんでしょ?」

「レイちゃんだけずるい」とキラが頬を膨らませて不平を言っても、
ただその仕草は愛らしいだけで。
愛しさに任せてレイはさっきよりも力をこめてぎゅうとキラを抱き締めた。

「苦しいよぉ、レイちゃんっ」
「ギルが帰ってきたら『イイコ』って言われたい?」
「いわれたいよ?」
「じゃあ早く寝よう?そうしたらギルも『イイコイイコ』してくれるから」
「ほんと?」

レイの腕の中で、もぞもぞと身体の位置を直しながらキラは尋ねる。
それに「うん」と頷きながらレイがキラの背中をさすってやると、
キラは満足したのかレイのパジャマにしがみつく。

「じゃあキラ、イイコにするね!」
「うん。じゃあ……」

おやすみ、とレイが言いかけたところでキラが「ちょっと待って」と声をかけた。

「なに?やっぱり眠くないっていうのは駄目だよ。ギルはイイコイイコしてくれないよ?」
「ちがうよぉっ。キラはイイコだもん」

やっと寝てくれる思ったのにキラの目がぱちりと開いていて、レイは小さく溜息をつく。
レイの方がキラよりも年上だとはいっても、レイだって子供なわけで。
遊び盛りのキラの相手を昼間からしているから、実はへとへとで。
今すぐにでも夢の世界に旅立てそうだった。

「あー!レイちゃん寝ちゃだめえ!」

ほんの少し瞼がくっついただけでキラに揺さぶられてレイはハッとなる。

「ごめんキラ・・・僕眠い・・・寝よう?」
「うん!寝るから!キラも寝るけど・・・」
「なに?」

レイが虚ろな声をかけると、キラは小さく身じろぎをした。
くっついた脚がそわそわと動いて、これ以上ブランケットがずれないように、
レイはキラの脚を自身のそれで挟み込んで動きを取れないようにする。
これでキラも少しは落ち着くだろう。

あとはキラの話を少し聞いて眠るだけ。

「早くキラ。僕、寝ちゃうよ?」
「ああん駄目だよっ」

キラが頭を振ると、亜麻色の髪の毛先が白い頬に当たった。

「レイちゃんは朝ギルに行ってらっしゃいの『ちゅう』した?」
「したよ?」
「やっぱりレイちゃんずるい・・・」
「キラが起きないからいけないんじゃない」

そう言うと、キラは「だって起きれないんだもん」と小さく呟く。

「どうやったらおきれるかなぁ・・・」

睡魔に飲み込まれそうになりながらもレイはなんとか、キラの小さな悩みの解決方法を考える。
そして「あ」と声を上げれば、キラが期待に満ちた瞳でレイを見た。

「なに!なにかあるの、レイちゃん!」
「うん。おまじないがあるよ」
「おまじない?」

レイが頷くと、キラは感嘆の声を漏らした。

「やって!やってみて、レイちゃん!」
「いいよ。じゃあ目をつぶって・・・」

キラが言われた通りに目を閉じると、ふわりとあたたかさが顔に近づいた。
そのまま、柔らかいものがキラの唇にそっと触れて、そのあとぺろりと濡れたものにくすぐられた。

「もういーい?」
「いいよ」

瞳を開ければ、レイの綺麗な顔がいつも以上に近くにあってキラはどきりとした。
きっと「ちゅう」されたんだと思って、レイのパジャマの裾を引っ張った。

「レイちゃん、今のおまじないなの?」
「そうだよ」
「今の『ちゅう』じゃないの?レイちゃんと『ちゅう』すると早くおきれるの?」
「うん」
「そうなんだ!すごいねレイちゃん!」

感心するキラをよそにレイは内心で「嘘だよ」と呟く。
けれどこうでもしなければキラは寝てくれそうもなかったから『ちゅう』をした。
他におまじないが思いつかなかったわけでもないのだが、キラの顔があまりに近くにあって、
やっぱり可愛かったから『ちゅう』をしたのだけれど。

「じゃあ寝れる、キラ?」
「うん!」


よかったと安堵の息をつき就寝したレイだった。


けれど。


次の朝、キラが起きれるはずもなくて「レイちゃんの嘘つき!」と大泣きされるのであった。








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ギルレイキラ親子っておいしい。
きっときらたんは3年後くらいにアスランに出会う(笑)