「もうっ……あの人最悪だ……」 キラは部屋に入るなりそう呟くと、着ていた淡いグレーのスーツを脱いでハンガーに掛けた。 本当は心の赴くままに、アスランへの憤りを込めて、スーツを放り投げたかった。 けれど数少ない貴重な仕事道具。 それがたとえ〇〇円を切る品物であっても、大事なものには変わりない。 そういえば、あの人のスーツって幾らくらいするんだろう。 髪の色に併せたのだろうか、藍色のそれよりもやや深い色をしたスーツに、彼の碧の瞳はよく映えた。 バランスのとれた体型でなければ、不格好に見えるそのデザインも彼は難なく着こなしている。 そんな、いかにも仕事ができそうで、自信に溢れたアスランの姿を思い出して、 キラは静かに溜め息をついた。 確かに、かっこいいよなぁ…… 嘆息に混じって漏れた言葉に驚いたのはキラ自身。 「うわっ……僕なに言ってんの!」 頭をブンブン振って身体を抱き締めると、心なしか鳥肌が立っているように感じられる。 「なんか寒くなってきちゃったよ……そうだ、お風呂……お風呂入ろう!」 キラは一人で頷くとネクタイを外し、スラックスもたたんでハンガーへと掛けた。 白いワイシャツとブリーフタイプのパンツなんていうみっともない格好になってしまったけれど、 キラは一人暮らしだから何の問題もない。 「恋人ができたら……こういうの直すべきかな?」 えへへ、と、まだ見ぬ明るい未来への希望に少しだけはにかみながら、キラはバスルームへと向かうのだった。
「今からお湯入れたら時間かかるし……シャワーでいっか」 ワイシャツの小さなボタンを未だに慣れていない手つきで外すと、残りの下着も脱いで浴室へと降り立った。 シャワーのコックを捻ると、まだ温まってもいない冷水がキラの身体に降り注いだ。 「うわぁぁっ!!!」 あまりの冷たさにキラは慌ててシャワーのノズルの向きを変えると、壁によりかかりながら座り込んだ。 「あったまろうと思ったのに……僕、死んじゃうよ」 流れて行く水の雨を恨みがましく眺めながら、キラは身震いした。 「なかなかお湯にならないんだよねぇ……」 とは言うものの浴室から出るのも今更である。 数分間の暇をつぶすために、キラは最近の出来事を思い浮かべていた。 「最近あったコトかぁ……」 アスラン・ザラに契約を横取りされた。 アスラン・ザラに契約を取ったところを潰された。 「……考えなきゃよかったな」 最大級の屈辱に身体の力が抜ける。 そもそも、このバスルームで冷水を浴びることになったのは彼のことを考えて鳥肌がたったせいなのだ。 この家で彼が何かしたわけではないから、別に彼が全て悪いってわけじゃないけれど、 少しくらい恨ませてもらわないとキラの気がおさまらない。 「ていうか、なんであんな酷いことできるわけっ…」 契約のこともだけれど、それだけではなくて。 キラはそう言いながら自分の細い身体を見下ろした。 そして、気がつけば白い手で、小さな桜色をした性器にそっと触れていた。 「僕……」 キラが触れたそこは、連れ込まれたホテルでアスランの手によって解放を強要されて、 快楽に見事に陥落してしまった場所。 悔しいことだが、アスランの愛撫は、今までの自慰経験よりも遥かに気持ちがよかった。 「んっ……」 不本意だけれど、それでもあの時の刺激を思い出すと欲求に熱い火がつく。 認めたくないけれど、その甘美さを再び感じたいという誘惑に駆られてしまって、 拙い指の動きで小さなそれを擦りあげると、うなだれていたそこは少しだけ硬くなる。 「あの人……僕のこと嫌いだからって……こんなこと……」 キラは手のひらでそっと性器を握ると、親指で先端を擦りあげた。 「ぁんっ…」 今の行為はアスランの真似。 滅多に自慰行為などしないキラにとっては未知の刺激であった。 「もしかして……ほも……なのかな……」 キラは息を切らしながら呟いた。 もちろんアスランのことである。 「そっか……ほもだから……おとこのぼくに……こんなこと……できたんだよね ……」 キラは性器を刺激する指の力を強くした。 自然と呼吸が荒くなる。 「ぅん……なら……なっとくかも……」 キラはそれを言い訳にするかのように、快感を貪った。 「んっ……ぁあんっ」 指で輪を作って根元から先端まで擦りあげて追い上げると、キラの興奮しても未だ可憐な大きさの性器は上を向いた。 「ん……ぅぁあっ!」 押し寄せる快感の波に、アスランと同じように先端の割れ目に爪をたててみると、 体中に電流が走りキラはあっけなく達してしまった。 「ふ……」 白濁が身体を濡らして、キラは恍惚とした表情を浮かべた。 糸を切られたマリオネットのようにくたりと身体を弛緩させたキラは、シャワーのノズルを見つめた。 「ぼく……きょうヘンだ……」 いつの間にか温まっていたのだろうか、シャワーの雨からは湯気が立ち上ぼっていた。
「っ……ゃっ…」 肉付きのよい臀部を指で辿られ、そのくすぐったさにキラは身を捩った。 アスランの長い指はキラの皮膚を優しくなぞりながら割れ目へと進んでいく。 「ふ……くすぐった……」 「そのままじっとしてろ」 震える性器も、双丘の丸みも、アスランが触れるとジンと熱くなっていく。 「いいか……入れるぞ」 その熱に浮かされるようにキラはただ何度も頷いた。 けれど。 「うわぁぁぁぁぁ!!」 双丘の奥に色付く蕾。 そこは決してキラから見えるものではなかった。 それでもツプリと潜り込んできた異物感に、キラは悲鳴をあげていた。 「やだっ…やだっ…なにっ」 「じっとしてろ」 囁かれたアスランの声に、荒っぽい吐息が混じっていてキラの下半身がゾクリと疼く。 それを証明するように、キラの内壁は侵入してきたアスランの指を締め付けた。 「やっ……やめてっ」 「うるさい」 逃げようと必死にもがくけれど、アスランは難なくキラの身体を抱き締める。 「大人しくしろ……イキたいんだろ?」 「だからって……なんでっ……ひっ」 深く突き刺さった指が中で曲げられて、キラは引きつった悲鳴を漏らした。 「ココでキモチよくさせてやるから」 「やだっ……」 激しく被を振ると、未だ戒められたままの性器に悪戯されて、キラは呼吸を荒くする。 お腹に力を入れて異物を追いやろうとしても、それによって引き起こされる締め付けはアスランを喜ばすだけだった。 「キツいな……こんなに食いついて……」 「だったら……ぬいてよぉっ」 中で蠢かれる不快感のせいで、目尻に涙が浮かぶ。 ただでさえ息をするのがやっとなのに、アスランの動きは止どまることを知らなかった。 「こんなに締め付けるんじゃ……俺のを入れるの大変だな」 「え……おれの……?」 酸素が不足しすぎてぼんやりする頭に囁かれる言葉。 意味がわからなくて、首を捻って背後のアスランを見ると、これまで見せたこともないくらい優しい顔をしていた。 「痛くないようにしてやるからな」 ジー、っというアスランのスラックスのファスナーが下ろされる音はシャワーの流水音にかき消された。 その瞬間に今まで弄ばれていた蕾からズルッと指が引き抜かれて、 代わりにあてがわれた熱いモノにキラの全身がひきつった。 「いやだぁぁぁぁっ!」 渾身の力をふり絞って抵抗を試みようとしたキラにアスランは小さく溜め息を付いた。 そしてそのまま性器を強く握りながら、乳首を抓りあげる。 こうすればキラは簡単に大人しくなる。 というよりならざるを得なくて、キラは悔しさに表情を歪めた。 「何を今更嫌がっている。イキたいと言ったのは自分だろう」 「言った……けど……でもっ」 「だからイカせてやろうとしてるじゃないか」 アスランは離れてしまった熱い雄を再びキラに押しつけた。 「やだっ……ぼくっ……こんなの……きいてないっ」 「なんだ。お前のペニスを触ってイカせてほしいのか」 「なっ…」 アスランのあまりにもストレートな言い方に羞恥が込み上げる。 けれど、その通りだった。 キラはアスランの顔をまともに見ることができなかったけれど、少しだけためらいながら、そして小さく頷いた。 「そうか……でも、今日全て触ってイクだけで終わるのもつまらないだろう?」 「え……なっ…」 足を抱えあげられて疑問の声が漏れる。 「イイ体験させてやるよ」 「っ……ひっ…」 アスランは間髪いれずにキラを貫いた。 あまりの痛みと衝撃に声も出せなくて、ただ口をパクパクと動かすことしかできなかった。 「ひぅ……あ……」 遠慮も無しにズンズンと突き上げられて、ぽろぽろと涙がこぼれる。 痛くて痛くてたまらないはずなのに、何故か熱いものが込み上げてきてキラは嬌声を漏らした。 アスランの熱が内壁を擦る度に認めたくない感覚が生まれて、吐息も自然と艶っぽくなる。 アスランの先端から溢れた蜜のせいか、濡れた音がシャワーのものよりもやけに大きく響く。 「ふっ……あっ……ぅっ」 「イキそうか、キラ?」 「ん…もぅっ……だめぇっ!」 アスランの声も濡れていた。 彼が気持ちいいのかなんて考えてもいなくて、ただ早く熱の解放だけを祈った。 アスランの手がしゅるりとネクタイを性器から外す。 シルクが敏感のそこを擦って、ブルリと身体が震える。 アスランはその瞬間を狙いすましたかのように、思い切り高ぶりを叩き付けた。 「ぅぁぁっ…」 「キ……ラ…」 身体の中で何かが弾ける感じがしたとぼんやりと思いながら、キラの意識は暗闇にのみこまれていった。 震える性器から太股を伝う白濁の存在を、キラは知らない。 「キラ……」 低い声で呼び掛けても返事はなく、 アスランの広い胸に弛緩したか細い身体を預けぐったりとしているキラの姿がそこにはあった。 水と汗に濡れて滴をしたたらせている亜麻色の前髪を人差し指に絡めとりながら、 アスランはキラの柔らかな瞼に唇をおとした。 「キラ……寝室どこ?」 甘く問うてもやはり意識はないようで、軽く揺さぶってもキラはピクリとも動かない。 それが少しだけ面白くなくて、アスランは突き刺していた雄を勢いよく引き抜いた。 瞬間、漏れたくぐもった呻き声に、アスランは満足げに微笑むと、そのままキラの身体を軽々と抱き上げた。 「疲れたのかな?でも……まだ付き合ってくれるよね?」 今度は唇に唇を重ねて、口内に舌を潜り込ませる。 アスランの言葉に、それとも侵入した舌に対してか分からないけれど、意識のないキラの身体はぶるりと震えた。 「あった」 キラと自分の身体を簡単に拭いて、キラの身体を抱えたまま階段を上ると、 見当をつけていた通りすぐに寝室は見つかった。 こじんまりとしたそこには、白いペンキで塗られたパイプタイプのシングルベッドがある。 マットの上にキラの身体を乗せながらアスランが膝を置くと、そこからはギシリと軋んだ音がした。 キラ一人乗せてこれだけ軋むのだから、アスランが一緒に乗ったら壊れるのではないかと多少なりとも考えたけれど、 その時はその時だと、アスランはいつになくポジティブだった。 「キラ……」 この日何度目になるか分からないくらいに囁いた名前を口にしながら、俯せにしたキラの背にそっと唇を落とす。 狭かったけれど、なんとかベッドの上に乗ると、 キラの丸い臀部に吸い付くようなキスを落としながら、その最奥を目指す。 割れ目の間の窄まった蕾を見つけて、アスランはそこを指で叩いた。 塗れているのは、アスランの熱を散々、といっても一度だけれど、受け入れたから。 ほんの少し指を入れたそこは、先ほどまでアスランを飲み込んでいたとは信じられない位に狭い。 アスランは指を深めながら、ざらりとした舌で入口をペロリと舐めた。 甘いそこは、収縮を繰り返し、アスランの指を奥へ奥へと誘う。 「意識がないのにこんなに誘って……淫乱だな」 淫乱と蔑みながらも、キラの内部を探るアスランの指は優しい。 アスランは含ませていた人差し指に加え、中指も差し込んで蕾を左右に開く。 そうして熟れた内部は、ひくついて、アスランの舌を飲み込んだ。 舌の抜き差しを数回繰り返したあと、指ごと舌を引き抜くとアスランは苦笑した。 「キラの中は甘いけど……自分のはあまり美味いものじゃないな」 キラの中に残った自分の残滓に文句をつけると、キラへの悪戯に興奮して膨れ上がった雄にそっと触れた。 「キラが起きてくれないからいけないんだよ……?」 ちゅく、と音がして、アスランの性器の尖端がキラの中に潜り込む。 「ぅ……」 「あ、キラ。起きた?」 嬉しそうにキラを見ても、ただ圧迫感に反応しているだけのようで、瞼は閉じられたままだった。 「せっかく気持ちよくさせてあげようとしてるのに……」 アスランは身体をキラの背に密着させた。 そのまま体重をかけて、キラの中に全てをおさめる。 「ぁ……っ!なっ……」 「あ、やっと起きた?」 起き抜けで何がおきているのわからないだのだろう。 声にならない声をあげながらキラは信じられないものを見るような瞳でアスランを振り返った。 「あ……なんで……ひぃっ!」 キラの細い腰を押さえ付けて、アスランはぐりぐり高ぶりを内壁に擦りつけた。 ぎりぎりまで引き抜いた性器を一気に奥まで叩き付ける。 それを何度も繰り返して、尖端が最奥に突き当たる度にキラからはあられもない声が漏れる。 「ぁっ……ゃあ……」 「キラ……挟まれてるからイケないね?」 うっとりとした声でアスランがつぶやいたのはマットとキラの身体の間で震えながら押しつぶされている愛らしい性器。 「ぁっ…ひどっ……」 「ひどい?どうして?」 アスランの堅い雄がキラの前立腺を否応なく刺激するから、勃ちあがっていても 押さえ付けられているそこに直接の愛撫を求めるのは仕方がない。 それを分かっていてアスランは、キラの性器を愛撫しようとはしなかった。 キラは悔しさからか、もどかしさからか、ぽろぽろと涙を零していた。 「ぃき……たいよぉっ」 「え?なに、キラ?聞こえない」 キラは目を見開いた。 与えられて当然と思っていたものを拒絶されたその姿が、ミルクを取り上げられ た子猫のようで、アスランの嗜虐心に甘い官能を与える。 「ふっ……ひっく……」 目が覚めたら再びアスランに貫かれ、無理やり官能を呼び起こされながらも、肝心な刺激は与えられない。 そんな理不尽な扱いにキラは嗚咽を漏らしていた。 「キラ?何を泣いてるの?」 分かっているけど、アスランは笑顔で聞いた。 キラはマットに顔を押しつけて、ただ嗚咽を漏らしている。 キラはプライドが高いから、ここまでされて簡単に折れるとは思わない。 もう少し焦らして、泣き声を聞いていたかったけれど、あまりにキラが心地よく締め付けてくるから、 アスラン自身がもう限界だった。 「しょうがないな……」 アスランはキラから己をずるりと引き抜くとキラを仰向けにした。 涙に濡れたキラは一層色っぽくて、足を抱えあげるとすぐにアスランを待ちわびる蕾に性器を挿した。 「つっ……ぅ」 アスランはキラの身体を揺さぶりながら、甘いなと思いながらも、 鍛えられた腹で解放を願う小さな性器を擦りあげてやった。 内部と敏感なそれを擦られる感覚に、キラの泣き声はいつの間にか甘いものに変わっていく。 「あっ……ぁ……あす……らぁんっ」 「キラッ……イイか?」 性交の最中にキラから名前を呼んでもらうだけで、背筋に甘い戦慄が走る。 貪るように唇を重ね舌を入れると、キラもそれに応えてきて、アスランの雄がより大きく膨れ上がった。 「ふっ…ぅっ…!」 キラの唾液を吸い上げて、もう一度深くまで突き上げる。 「ひっ……あぅっ……い…くぅっ!」 「っ……俺もだっ……」 荒っぽい吐息が混ざりあう。 キラの尖端からトロリと蜜が溢れると内壁がキュッと収縮して、アスランも白濁 を迸らせた。 キラは再び意識を失ったようだった。
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