「散々な一日だったな…」
アスランは与えられたカードキーを通して部屋に入ると、上着だけ投げ捨ててベッドへと倒れこんだ。
「疲れた……」
原因は、戦闘でもシンとの嫌味の応酬でもない。
キラだ。
別にキラが何かしたわけではないのだが、この心の波は確実にキラによって引き
起こされている。
とはいえ、少し辛く当たりすぎたかな。
慣れない彼女の好意に、つい一歩引いてしまうのだ。
そう考えてから、アスランは自嘲気味に笑った。
「別に俺が好きってワケじゃないのか」
キラはザフトの兵士やデュランダル、つまりは自分をちやほやしてくれる人間が好きなのだ。
しかし議長に頼まれているから、「アスランを好きな」婚約者を演じているにすぎない。
アスランに嫌われるの……ヤ……
キラの言葉が頭の中で反芻する。
あれが演技なのだとしたら、大した面の皮だ。
再び込み上げた嫌悪を伴う苛立ちに、アスランは胸を押さえた。
キラに対する嫌悪感ではない
キラに対して不信なまなざしを向ける自分への嫌悪
けれど、キラを不信がってしまう原因はキラにあるのだから、やはりキラが悪い
。
「チッ……ややこしい」
アスランは本日何度目になるかもわからない舌打ちをすると、そのまま瞳を閉じた。
意識がだんだん深い闇に落ちて何もわからなくなっていく。
ただわかるのは、やはりベッドは柔らかかった、ということだけだった。
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