「濃いな……自分でしてなかったのか」

顔についた白いものをアスランはぺろりと嘗めとった。
アスランのその姿に、頬に熱が溜まるのと同時に、頭の鈍痛が増した。

「なに……して」

キラの上擦った声など気にせずアスランは顔についた白濁の全てを、見せ付けるかのように口のなかへとおさめる。
残るのはキラの内股を濡らすものだけだ。

「ゃっ……」

薄紅に染まった性器をかすめるようにアスランは柔らかな肉に舌技を施す。
丁寧に精の残骸を嘗めとりながら、時折悪戯するかのようにきつく吸い上げて紅い印を刻み付けていく。
アスランの髪が性器をくすぐるように触れるのに、確かな刺激はない。
そのもどかしさにキラの腰は自然と揺れた。
一度吐き出した熱が下腹部に集中していく。
もっととねだる身体と、男としての意地がキラのなかでぶつかりあう。

「や……」

キラのそんな気持ちを知ってか知らずかアスランはいたぶるようぬ付け根ばかりに刺激を与える。
かかる吐息も、口付けも、それだけでは物足りないとキラの性器がいたいけに震えた。

「う……」

泣きそうな声が漏れてしまう。

中途半端に腫れ上がった場所が、痛い。

そして認めたくはなかったけれど、後ろも、甘く疼く。
一度アスランをくわえ込んだ箇所は、その快感を覚えているのか。
信じられない事態にこのまま意識を飛ばしてしまいたかった。

「勃ってる」

言われなくてもわかってる。
赤くなった瞳で見返すと、アスランはうっすらと微笑して、指で先端をはじいた。

「あっ……」

ぴりりとした痛みに鳥肌がたつ。

「どうする?出したい?」

真顔でそんなことを聞かないでほしい。

「だし……たくない……」

なけなしの理性を本能より優先して答えたキラは、アスラン様子をそっと窺った。
今までのアスランとのやりとりのパターンでは、きっと彼が不機嫌な態度を示すかと思ったからだ。
けれどキラのそんな予想に反して、アスランは眉一つ動かすことなく、キラの性 器から顔を離した。

「そうか」
「あ……はい」

頷いたものの、正直放っておかれた性器は疼く。
アスランがいなければ恥ずかしいけれど自分で何とかするのに。
するとアスランは何を思ったかキラの足首にそっと触れた。
そのまま指先で皮膚をなぞる。

「ちょっと……」
「ん?」
「くすぐったいんですけど……」

アスランの表情は穏やかだ。
だからこそこの行動の意味もわからない。
ふいにアスランが口を開いた。

「ねえ、キラ」

キラを擽る指先がぴたりと止まった。
それにキラは思わず身体を大きく震わせてしまった。

「は、はい。何でしょうか?」
「介抱代は払ってくれるんだろ?」
「……」

介抱してくれと頼んだ覚えはない。
けれど一応着替えも寝床も貸してくれたのだから、それなりに御礼はしなければならない。
かといってさっきアスランがするような「身体で払え」みたいな真似なんて、今は流されて恥ずかしい恰好をしてしまっているけれど、
冷静に考えれば納得するわけにはいかなかった。
キラだってちゃんと仕事をしているんだから、自由になるお金は本当に少しだけれど、あるにはある。
もし請求される額が高くても、少しずつなら払っていけるだろう。
だから拳をきゅっとにぎりしめながら恐る恐るアスランを見つめた。

「……払いますよ」
「そう」

また予想外の反応だ。
「どうせ払えないんだろう」と言ってくると思ったのだ。

「僕だって働いてます!」
「知っている。キラのことで知らないことは、ない」
「は?」

今、恐ろしいことを聞いた気がする。
それを深く考える前に、アスランはキラの上に覆い被さった。
そのまま首筋に唇をそっと這わせる。

「ちょっと……こん風には払いませんっ……!」
「キラ……このシャツ」

アスランはそこまで言うと、暴れるキラの身体を押さえながらおもむろに耳たぶをそっとはんだ。

そして囁かれる言葉にキラは絶句した。

「へ……?」
「聞こえなかった?このシャツの値段」
「うそ……」
「そういう嘘は嫌いだ」

アスランはキラの羽織ったシャツを摘んで微笑みを作る。
アスランの囁きに含まれた数字はキラが持っているシャツの値段とと「0」の数 がいくらか違った。
いくらか減らしても、キラには到底手が届かない。

「払ってくれるんだろう?」
「う……あ……」
「俺は寛大だから、金銭じゃなくて結構だ」

どこが寛大なんだ。

結局こうするつもりだったんじゃないかとキラの身体は怒りに震えた。
アスランはボタンをするりと外していった。




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